2014年に部分リフォームをしたお宅の写真を先日「Works」に追加した(小平のマンション住戸改修)。
その年の春、中古マンション住戸の購入を決めたクライアントから、フルリフォームする予算はないけれど、入居前にいくつか直したいところがあって、と相談を受け、現地の下見にご一緒した。
築20年ほど、約70㎡、3LDKのマンションは、販売にあたってのリフォームはそれなりにきれいにしてあり、そのまま住もうと思えば住める。賃貸だったら十分なレベルだろう。でも自分の家として住んでいくには、収納の中の作りや、浴室・洗面台の使用感など細かい部分が気になる。そして、南向き最上階なんだけど何だか暗く寒々しい気がするんだよね、床や建具の色がダークなせいかな、和室も個室としてはいらないんだけどどうしたものか、といったお話を聞きながら、室内を拝見。
収納や洗面台といった設備面は要望に合った内容に詰めていくとして、せっかく南側のバルコニーに面する主空間が、たしか何となくうす暗い。2カ所の窓を生かすために、和室との間仕切り壁をなくすこと、樹脂系の内装材が大部分の室内に、なるべく天然素材を持ち込んで柔らかい空気を作る方針を提案した。畳を一部残すか、間仕切り壁の代わりに戸やカーテンを入れるか、等々、いろいろな案をやりとりしたあげく、間仕切り撤去、和室の畳を杉の無垢フローリングに変更、というシンプルな結論に。
厚み30mmの国産杉の節あり無垢フローリングを採用。これだけだとマンションの床の騒音規定を守れないので、フェルトを使った天然素材の遮音マットを下に敷いた。間仕切りを撤去した痕は、木の枠でふさぐ。
杉の無垢フローリングは、材料が届いてみるとなかなかに反っていて、大工さんが苦労しながら敷き詰めてくれた。そしてクライアントがオイル系の塗料を自主施工。足に柔らかく暖かく、なんとなく畳と同じようにあがるときにスリッパをぬいでしまう。
和室の襖は、シンプルな和紙貼りの建具に入れ替える計画だったが、建具屋さんが製作に使った下地合板が案外きれいで、クライアントが気に入り、紙を貼らずにそのまま完成。(紙を貼る予定だった職人さん、ごめんなさい。)和室の名残は、建具枠や長押、廻り縁に残るのみとなり、これらも白いオイルで柔らかく塗装した。
リビング入り口のガラス格子戸は、クライアントの希望で、小さなステンドグラス入りのものに作り替え。このあたりは、私は実現のお手伝いというか、いわば通訳係ですが、こうしてその人らしさが加わっていくようです。
早いもので工事から2年ちかく経ち、前回我慢した浴室周りに手を加えたいということで、この冬に久々におじゃました。すっきりひろびろと使っている主空間には、夕方になっても昼の日差しの気配が残り、既存の床材のままの側にも以前のよそよそしさがなくなったような。機能上は、もとの和室とリビングダイニングのままでも一応住めたし、限られた範囲の単純な改修だったけれど、手を加えたことで、住み手とともに時間を重ねていく、クライアントにとっての特別な居場所になったような気がしています。