もうひと月ほど前のことになるけれど、昨年リフォームの設計監理をしたお宅(東戸塚のマンション改修)に遊びに行かせていただいた。小さいお嬢様こころづくしの手書きの席札や飾り付けをほどこされたお部屋で、手作りのお菓子やサンドイッチをいただき、とても楽しい午後でした。
クライアントは、かねてからお母様と同居する新しい住まいについて準備と検討をこつこつ重ねていて、何度かお話をうかがっていた。そして昨年の冬の終わりくらいに、中古マンションで気に入ったものが出て来たけどリフォームして住めるだろうか、と連絡を受けて、実際の計画が始まった。
南北両面にバルコニーを持ち、2世帯で気持ちよく住めそうな低層住戸で、緑の多い周辺環境。よく見つけましたねえと感心した。前の人が退去したままの「現状渡し」だったので、本当に必要なことを抽出して、我慢できることは将来にまわし、無駄のない(ほぼ)全面リフォームとなった。例えばフローリングは本当にいたんだところだけ部分的に張り替えたり(工務店さんにはずいぶん気をつかって施工していただきました)、キッチンも使える吊り戸棚は残したりする一方で、じゃまな間仕切り壁や収納はばっさり撤去し、2世帯用に2つのキッチンを2つにして、あいだを引き戸で仕切った。
竣工引渡のとき、工務店の社長さんから「しかし長くやっていてキッチンが隣あわせに2台並んでいる家っていうのは初めて見たね!」と声をかけられた。それがこのご家族とこのマンションの組合わせでのベストな配置だったわけだ。もともとクライアントが要望として考えたアイデアを私にパスしてくださり、受けた私が実現できるかどうかの検討と、実現のための設計を行って工務店にさらにパスし、「初めて見る」状況がここにある。
これが不動産屋さんの売り出し用のリフォームだと、まんべんなくきれいに見せるために、フローリングは廉価な材料で全面を貼ったり、設備類をそのままのレイアウトで入れ替えたり、となりがちだ。きれいな印象のほうが買い手がつきやすいという事情もあるらしい。けれども、人の暮らしや好みは千差万別。時には真新しい仕上げをすぐ撤去してさらにリフォームなんていうことにもなる。住む人が決まってから、その人に合わせたオーダーメイドのリフォームをしたほうが、お金も材料の資源も存分に生かせるな、とつくづく思います。新築でも同じようなことかと。