3月はじめに海野宿(うんのじゅく)の雛祭りを見物した。海野宿は北国街道沿いの宿場町で、伝統的建造物保存地区として街並が保存整備されている。北国街道は、私のいる御代田のちょっと東の追分で中山道から分かれて長野の善光寺へ向かい、さらに北陸のほうへつながる。追分から3つめの宿場が海野宿で、御代田からは車で40〜50分。
まっすぐのびる道沿いに、細い水路と格子戸の街並が続く。
海野宿の雛祭りイベントは、それぞれのお宅が道に面した部屋に自宅の雛かざりを出し、それを格子戸越しや縁側越しにながめるのが基本形。
おうちによっては、土間まで入って座敷をのぞかせてもらうところもあり、道沿いの長屋門のような建物の部屋に入らせてくれる所もあり、ひな人形もおそろしく古そうなこけし状のものから、わりと最近の女の子の名札(昭和50何年、○○)が付いているものもあり、本当にそれぞれの家の人形を飾ってるんだな、大きくなった30代の娘から「えー私の名前は出さないでよー」とクレーム来そうだな、それにしてもどこの家も何代かのうちには必ず女の子が生まれるものだな、とほんのり楽しくのぞいて歩いた。
どれもそれぞれに人形の個性があって、お部屋の造りと合わせて眺めるのがおもしろかったけれど、本陣のお宅の飾り方は、庭の奥行きとあいまって、さすがの風格でした。
海野宿はだいぶ前から街並保存をしてきたらしく、点々と建設省やら国交省やらの記念碑が建ち、舗装も立派だけど、かといって派手な観光地化をしているわけでもなく、お店やカフェもぽつりぽつり。お客さんも人ごみには程遠く、近隣からドライブがてらの散策に来ている風情の家族連れが多い。脇道を入ればものすごく深い奥行きの各戸の敷地に実際の生活が展開されていて、古い建物の正面を保存しつつ日常を暮らしていく手間と苦労がしのばれた。その一方で、自分がこんな家に生まれたらどんな気分だろうとわくわく妄想してみたり。
旧暦の三月三日は、いまの4月はじめくらいにあたるそうで、たしかに木々が少し芽吹いて、リアルに桃の花が咲いたほうが、うらうらとお祝い気分になれるような気がします。空気の色が春らしくなった!と言いつつ、ときどき雪が降り、梅も咲いて日も長くなった!と言いつつ、またちらっと雪が降りの3月もあと数日。