音を聴く

地面に落ちたヤマボウシの実
地面に落ちたヤマボウシの実

9月の連休に東京から遊びに来た知人と軽井沢のカフェを訪れた。

カフェの外の地面に落ちている赤い実を見て何だろうというので、ヤマボウシの実だと教えてあげた。続けて、私の御代田のアパートの仕事部屋のすぐ外にもヤマボウシの木があって、日中に机に座っていると、「‥‥ぽたり。」と落ちる音がするんですよ、と話したら、設計事務所らしからぬ風流な環境だと笑われた。

ヤマボウシの実
近くで見るとこんな実です。あまり味がないけど一応食べられます。

表の道路を車が通る音や(みなさんけっこう飛ばすので音も大きい)、少し先の線路を新幹線が走る音など、騒音と呼べる類もそれなりにあるのだが、それでもやはり人口密度が低いおかげで、この前に住んでいた世田谷のわりと静かな住宅街に比べても、基本の状態は格段に静かだ。

地面に木の実が落ちる音も聞こえるし、その木の枝に小鳥が来たときに、さえずりはもちろん、「ぱぱぱ」という羽ばたきの音もしっかり聞こえる。

ヤマボウシ
なっているところ。うちの方はすっかり終わってしまったので、写真は3枚とも佐久の実家のヤマボウシです。

先週、ライブを2つ予約してあった。数か月前の予約時の読みでは、仕事がひと段落しそうだし、9月の連休だし、ちょうど遊びに出かけて良い時期だと思っていたのだが、うっかり風邪をひいたばかりに、しつこい咳が残りながら恐る恐る出かける羽目に。
1つめのライブは、長野市のネオンホールというライブハウスで、グッドラックヘイワというピアノ(キーボード)とドラムス2人だけのユニット。古い木造の商店を改造したような小さな会場で、演奏する方も聴く方もとても楽しい、濃密な時間でした。また来ます!と言う全国ツアー中のミュージシャンに、また来てください!と拍手したりして、「地元の人」として迎えるのはなかなか愉快。

ネオンホールのサイン
長野のネオンホールのサイン。このとおりの手作り感のあるライブハウス。

2つ目のライブは、(東京の)グローブ座にて、リトルクリーチャーズというトリオバンドの25周年ライブ。去年、アナログ盤のみのシングルを出していて、これがこれまでにまして良かったので、続くアルバムとライブを楽しみにしていた。アナログ盤だけ出すって面白いなあと好奇心半分で買ったのだが、実際に聴いてみたら、シンプルで、あたたかくて、ソリッドで、重たい音が、確かにアナログ盤で納得な音楽だった。
グローブ座でのライブも、そしてあえてライブまで買わずに待っていたアルバムも、期待を超える良さでした。

リトルクリーチャーズ
リトルクリーチャーズの最新シングル。無地のボール紙のケースもシンプルで好きなのですが、真ん中の穴からわりとホコリを呼びます、、、。

実はこのシングルを買うまで、「ドーナツ盤」(回転数によって呼び名が違ったりするらしいですが、ここでは形状の意味で)のレコードを扱ったことがなかった。小学校の終わりころに実家にCDが導入されるまで、多少レコードは聞いていたが、フルサイズのLP盤ばかりだった。ドーナツ盤て真ん中の穴が大きいですね、目測で中心軸を合わせてプレーヤーに載せて聴いていると話したら、年長の方が大笑いして、ちゃんとプレーヤーにアダプターが付いているのを教えてくれた。
その後、別の年長の方が、長年の間になんとなく集まったというドーナツ盤を、「うちではいま聴かないから」とどっさり貸してくれた。60年代当時のものかと思われるあたりから80年代あたりまで、国内外問わず。ちびちび聴き始めたら、予想以上に楽しい。昭和の歌謡曲など、初めての曲を聴く面白さの他に、知っている曲も、これで聴くと音の立体感が違う気がする。今の所いちばんの衝撃は、THE BEACH BOYSで、もともと好きなんだけれど、CDで聴いてきたものと全然印象が違って、音の厚みに「ふわあー!」とテンションがあがって引き込まれる。レコードの方が波長域が広いという思い込みのせいなのか、、、でもやっぱり違うと思うんです。

ドーナツ盤
ダンボールごと、どかんとお預かりしています。

御代田に来てから、音楽を聴くことが一層楽しくなった気がする。静かだから集中しやすいのかもしれない。
いまの住まいならではの音環境といえばもうひとつ、周りに木立があると、雨がやんでもしばらくのあいだ、こずえから水滴がしたたり続けるので、雨音が続いているように錯覚する。傘を持って玄関を出たら、雨はとっくにやんで晴れかけていたりする。この時間差、そして雨が降っていると間違えるほどの水滴の量。植物の葉は、それぞれに水滴を集めやすいような形状を取っていると教わった気がするけれど、確かにねえ、としみじみ思う。

やはりだいぶ風流かもしれない。

コスモス
コスモスは終わりが近く、雨続きのなか稲は刈入れどきを迎えております。