建築見学日記

浅間山
今日の外出途中での浅間山、見慣れた南側でなく北東側から。と思ったらちょうど太陽が雲に入ってしまった。

昨日の雪、ここでも降りました。

雪の予報が出た時から、「まだ大丈夫」派と、「今度は降るかも」派に二分されていた今回の雪、昨日の朝から本気モードでさくさく降って、しっかり雪かきの必要な積雪となった。

「まさかと思って冬タイヤにしていなかったけど前日や当日朝にごり押しで手配できた」派、「手配できなくて自力で移動できない」派、「急に降ると怖いので先週あたり早々に交換してあった」派(私はこれ)の三つ巴の1日。

まだ暖かい日が戻ってはくるだろうし、雪が降ると生活上の支障は出るものの、数時間で景色を一変させる雪は、やっぱりちょっとテンションが上がる。降雪翌日の今日は快晴で始まり、雪景色のまぶしさについ写真を撮ってしまう。

 

 

ハーモニーハウス
ハーモニーハウス外観。1階の元食堂はカフェとして営業しています。

雪景色の中では遠い昔に感じる8月の真夏に、軽井沢で建築の見学ツアーに参加した。

吉村順三さんが80年代に設計した「ハーモニーハウス」と「旧カニングハム邸」。

ハーモニーハウスは、音楽を学ぶ青少年が合宿する施設として個人の資金で作られたそうで、練習場兼ホールと食堂の建物と、宿泊棟からなる。

無駄のない、気持ちの良い簡素さのある建物なのですが、とにかくどの窓を見ても景色を切り取るプロポーションが格好良いし、その開口と室内空間のバランスも快適でした。むやみに大きく開ければ良いというものでもない。軽井沢に滞在するってこういうことですよ、と言われているような。

ハーモニーハウス
ホール部分。奥の高いところはステージにもなるギャラリーで、緩いスロープで上ります。
ハーモニーハウス
スロープの手すり。降りたほう、ギャラリーの下には、食堂(今はカフェ)。
ハーモニーハウス
ギャラリー部分の開口。
ハーモニーハウス
ハーモニーハウス宿泊室の開口。ちょっと腰掛けられるような窓下の高さがまた快適。

そして旧カニングハム邸は、ハーモニーハウスを作ったカニングハムさんの別荘で、ハーモニーハウスの隣にある。キッチン・ダイニング・リビングを兼ねる大きな部屋と、小さいベッドルーム2つとバスルームだけのシンプルな山荘。合宿所の楽器の音を聞きながら緑の中でのんびりするための別荘で、実際のんびりできそうです。

現在これらの建物は、貸別荘や貸しホール、カフェとして運営したり、こうした見学ツアーを催したりすることで、維持をしようとしているそうだ。カフェのメニューはまあ軽井沢価格ですが、建物保全にささやかに貢献もできるし、気持ちの良いロケーションと空間、座り心地の良い椅子でゆったりくつろげます。

旧カニングハム邸
旧カニングハム邸の外観。
旧カニングハム邸
旧カニングハム邸内部。ベッドルームは、1階とロフトのような2階にひとつずつ。

そして10月、旧軽井沢の脇田美術館でシンポジウム(海外の歴史的建造物保存動向を考える−フィンランド建築家/アルヴァ・アアルトについて)と脇田和アトリエの見学がセットになったイベントに参加した。

脇田和アトリエも吉村順三さん設計で、こちらは1970年のもの。脇田美術館の中庭に、中の暮らしぶりもそのまま保存されている、というかアトリエを囲んで美術館が作られている。

脇田和アトリエ
見学の待ち時間にアトリエの周りをうろうろして、魅力的な小さい窓の写真を撮る。

脇田和についてはほとんど知識がないと思っていたが、シンポジウム後に美術館内の展示を見学していくうち、小さいコラージュ作品を見て、何人かの作品を集めた企画展で見た気がするぞ、と気づく。さらに見進めるうちに、子供の頃さんざん読んだ絵本の「おだんごぱん」の絵も描いた人だと知って、衝撃を受けると共に一気に親しみを深める。

脇田和アトリエ
あの窓は手洗いコーナーの窓でした。中から見ても魅力的。
脇田和アトリエ
居間。このあたりがよく写真に使われるけれど、実際に見ると、写真から想像するよりはるかに雰囲気が濃いです。
脇田和アトリエ
ダイニングコーナー。いま思い出しても楽しい。。。

アトリエ内に見学を受け入れるのは年に1回(今年は特別に2回になったとか)だということで、脇田和の息子さんご自身が、見学者に説明をしていらした。ダイニングや居間の居住スペースも魅力的なのだが、その奥のアトリエと書斎もまた魅力的。作業机のサイドテーブルの道具類の並びぶりも可愛らしい、と写真を撮らせてもらっている横で、脇田和は生前、アトリエの道具類のレイアウトを厳しく決めていて、誰かが動かしてもものすごく怒られたし、ご自身も慎重に戻していた、と説明をしてくださった。

脇田和アトリエ
これ自体がインスタレーションのよう。タワシやほうき類は画具ではなくモチーフだったそうです。
脇田和アトリエ
なんとなく惹きつけられる机の上の並び。

こうした道具類や家具は、建築本体と一体化していて、これらなしにはこの空間の雰囲気は成り立たないだろうと思う。こうして長年使いこまれることで、建物がいよいよそれらしくなる。

夏に見た旧カニングハム邸やハーモニーハウスが、こちらに比べると少し印象が薄い気がしたのは、いまの使い方(貸しホールや貸別荘、カフェ)になってからの時間がまだ短く、それとしての使い込みがまだ少ないからかもしれない。かといって脇田アトリエのような特殊な保全環境にでもない限り、カニングハムさんの使ったそのままに残しておいたとしても建物の維持ができない。建物の維持にはやっぱり現役で使われるのがいちばんで、ということは、これからみんなで維持保全に協力しながら使い込んでいけば、さらに魅力が増すはずで、それもまた楽しみです。