唐松の川下り

唐松
板に製材され、反らないように重しをして寝かされている唐松

先日、唐松材の生産者をめぐる見学会に参加した。佐久から南へ向かって、伐採の行われる北相木村からスタートし、丸太を扱う佐久穂町の会社、建築の製材にする佐久市内山の工場へ。

 

長野県内では、カラマツは昭和40年代まで造林のためにさかんに植えられていて、現在その広大な人工林が成熟期に入り、利用拡大が切望されているそうだ。国産材で一般的なスギやヒノキに比べると、反るとか樹脂が出ると言われて不安になって使いづらいことが多い。けれども天然での分布もしていた地元ならではの樹種でもあるし(北海道には天然分布していなくて、長野県から多くの苗を供給したのだとか)、時間とともに色味が濃くなる特色もあるし、適材適所で使ってみたいものです。

社屋の見学
社屋の見学
吉本社屋の階段室のトップライト
吉本社屋の階段室のトップライト

林業では、生産から供給までの各段階を「川上(かわかみ)」「川中(かわなか)」「川下(かわしも)」と呼び分けるそうで、伐採したり丸太を生産するのが「川上」、その丸太を仕入れて建築に使える形に製材するのが「川中」、その製材を使用する施工・エンドユーザー・および我々設計も含め「川下」だとのこと。この話は「川上」の会社でうかがったのだが、そのあと行った「川中」の製材工場の方もさらっと使っていたので、業界では普通に使う言葉なんですね。山で伐採した木が川を下って行くイメージでおもしろい。というか、今回の見学は小海線沿いに山を降りてきた感があって、本当に川上・川中・川下でした。

吉本社屋の階段室。唐松をあえて集成材(細かい挽き板を合わせたもの)にしてから貼ってあった。おそらく意匠的な趣旨かと。
吉本社屋の階段室。唐松をあえて集成材(細かい挽き板を合わせたもの)にしてから貼ってあった。おそらく意匠的な趣旨かと。
唐松集成材
唐松集成材の壁を近くから。材をいったん細かくすることで節や色むらが均一でやさしい印象になる気がします

その「川上」で見学させていただいた「株式会社吉本」さんは、明治時代から丸太の産出を行っている老舗の会社で、賑わった時期は小海線に載せてじゃんじゃん丸太を送り出し、そのために会社の前に駅もできたそうな。

その本社社屋は高須賀晋さんという方の設計によるもので、他のツアー参加者の方が大ファンなので参加しましたとおっしゃるまで常に不勉強な私は全く認識していなかったのだが、大変興味深い建築家のようなのでこのあと学んでまいります、、、。率直で力強い意志の感じられる建物でした。

唐松丸太
北相木村の伐採後の唐松の丸太。同じ人工林から運ばれてきたのですべて同級生なんだそうです。

同じく川上の北相木村で積んである色々な太さの唐松の丸太を眺めていたら、案内をしてくださった林業組合の方が、全部同じ樹齢ですよとおっしゃるのでびっくりした。人工林なので、あるエリアを伐採すればすべて同じ樹齢。ただ、生えている場所によって同じ年数での太り方がぜんぜん違う。太い方がお得感と使いでがあると見るか、細い方がゆっくり育っているので組織が密で価値があると見るか、、、。木造はこのように生き物を素材にするわけで、しかも私の手元に来るまでに長い流通の川があり、難しくて面白くて難しい(涙)。

仕事部屋からの景色。
仕事部屋からの景色。

私の仕事部屋の前の植栽も、梅雨のひと雨ごとにわさわさと葉のボリュームが増え、目の前の駐車場がみるみる覆い隠されて、生き物アピールに余念がないです。