今年の年明け早々に新しい事務所兼自宅の建物に引っ越し。そこからほぼ4ヶ月がたった5月の連休に。ついに!キッチンが導入されました。
仕事との同時進行でなかなか過酷だった昨年の工事中は、手持ちのお金と検討や工事の時間がなくなって早々に竣工時のキッチン設置をあきらめた。そのころ、女性建築士の集まりの食事会で少しその話をして、みなさんにあらあらと驚かれ、「洗面台とカセットコンロがあればしばらくなんとかなるかなと」と言ってみたら、離れた席に座っていらっしゃった大先輩がうんうんと力強くうなづいてくださった。そのお姿を心の支えにキャンプのような生活を開始。
レンジフードの下でカセットコンロを使い、食材も食器も脱衣室の洗面台へ運んで洗面ボウルで洗う。そう言うとさぞかし料理せずに外食生活やテイクアウト生活だろうと思われますが、けっこうこの環境で作れるものを作って食事していた。途中からは自粛モードに入ってさらに在宅での食事を徹底。1口の火をいかに使いまわし、洗い物を少なくするか、という日々のおかげで、だいぶ手際が良くなったかもしれない。さらに食器に残る食材のくずに敏感になり(洗面ボウルにはキッチンのような集塵機能がないので)、ゴマを一粒ずつ箸で拾うように。
ゴマや豆苗の茎を箸でつまみあげながら、ああキッチンを早く付けたいなあと言いつつも、依然ついつい仕事に追われている気分が抜けず、自分のキッチンの図面が描けない。そもそも仕事でない宿題のような用事は、ものすごく億劫で取りかかれない。さらに少し手をつけてみても、念願の自分のためのキッチンのはずが、あるいはだからこそ、要望がまとまらないし、優先順位も整理できない。お客さんのためなら客観的に見てコストバランスや要望の強弱で整理してはりきってまとめられる(まとめられているつもり)なのに。そしてカセットボンベを毎週購入しつつ、なんとか料理して暮らせてしまっているので切羽詰まってはいない。まさに紺屋の白袴だ。
それでも冬が終わる頃、当時はまだ中国での出来事だったコロナウィルスの影響で設備機器の納期がかかるようになってきたというので、コンロやシンク、食洗機などの機器をぼちぼち注文した。入って来る頃には図面が書ければ、と思っていたが、事務室や玄関に巨大なダンボール入りの機器がたまってもまだ書けない。昨年からずっと工事中だったツルヤ御代田店が春にオープンするまでにはね、などと半分冗談で言っていたが、それが冗談でなくなってきて、ようやく材木屋さんにカウンター材や下の台の材料の相談を始めた。
そうするとわずかな金額の材料購入と加工に対し、先方はありがたいことに納期のあるお仕事として対応してくださり、材質や作り方についてどんどん質問が来て、それにお尻を押される形でなんとか図面が進み始めた。さらに自分たちでオイルを塗装するというと、加工場に場所を作ってくださって、何日か塗装に通わせてもらったあげく、下の台や引き出しの組み立ても指導を受けながら一緒になって制作。
取付当日も材木屋さんと大工さん電気屋さんの手を借り、自分の採寸が間違っていたらどうしようとひやひやしたり、一部下地を直してもらったりしながら、なんとか完了。さらに後日に給排水やガスの接続もしてもらって、ようやくキッチンが稼働するようになった。
パスタの茹で汁をダイレクトに流しながら、シンクのありがたみを噛みしめる日々。
とはいえ、まだ作りたす棚やワゴンもあり、写真の通りタイルも一部未完、またまた手持ちのお金が足りなくて見送りとなったガスオーブンの設置も残っており、当分作りかけの、染め残しのある白袴です。皆さまご協力ありがとうございました。